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- 6 放射線計測ガイド
- 6-2 放射線計測の基礎
- 6-2-1 放射線とは
- 6-2-1-11 放射線の量と単位
6-2-1-11 放射線の量と単位
- 1. α線
- 2. β線
- 3. 軌道電子捕獲
- 4. γ線
- 5. 自発核分裂
- 6. α線と物質との相互作用
- 7. β線と物質との相互作用
- 8. γ線と物質との相互作用
- 9. 中性子と物質との相互作用
- 10. 荷電粒子による核反応
- 11. 放射線の量と単位
(1)放射能
放射能は単位時間当たりに壊変する原子数で定義される。単位は〔s-1〕で、これをBq(ベクレル)とよぶ。
(2)粒子フルエンス
粒子(放射線)の飛ぶ方向が一様の場合(平行線束)は、飛行方向に垂直である微少な面(面積da)を通過する粒子がdNである時、粒子フルエンスはdN/daで定義される。方向が単一でない場合は、単位面積の大円を有する球(すなわち半径1/π1/2の球)を通過する粒子の総数で定義される。単位は〔mー2〕である。単位時間当たりの粒子フルエンスは、粒子フルエンス率とよばれ、単位は〔mー2・s-1〕である。
(3)照射線量
照射線量は空気が光子によって照射された場合にだけ定義できる。微少な領域の空気(質量dm)中で発生した2次電子が、すべて停止するまでに生成する電子-イオン対の、いずれか一方の電荷をdQとすると、照射線量Ⅹ は、Ⅹ=dQ/dmである。単位は〔C・kg-1〕(Cはクーロン)である。
(4)吸収線量
物質内の微少な領域(質量dm〔kg〕)が放射線からdε〔J〕(ジュール)のエネルギーを受けたとき、吸収線量DはD=dε/dm〔J・kg-1〕で定義される。〔J・kg-1〕の単位を特にGy(グレイ)という。吸収線量は、放射線や物質の種類にかかわらず定義される。光子や中性子のように、直接電離作用を行わない放射線では、エネルギーは2次荷電粒子によって与えられる。
(5)防護量と実用量
被ばく限度を表す際に用いられる量のことを「防護量」と呼ぶことが多い。この防護量の中にも、いくつか異なる意味を持つ量がある。一つは「実効線量」と呼ばれるもので全身の被ばく量を表すもの、また「等価線量」と呼ばれる体の一部の組織に注目して、その組織の平均吸収線量に放射線加重係数を掛けて実質的な被ばく線量を表したものである。これら防護量としての「Sv」はあくまで評価量であるため、実測することは不可能である。
そこで導入されたのが、測定可能な量としての「Sv」である。この測定可能な量は通常「実用量」と呼ばれ、サーベイメータや個人線量計などの放射線計測器はこの実用量を示すように作られている。この実用量は、測定対象によって大きく2つに分けられる。一つは、ある場所の線量を評価するために用いる「周辺線量当量」および「方向性線量当量」と呼ばれるものと、人が被ばくした放射線の量を評価するために用いる「個人線量当量」がある。
(6)等価線量
被ばくの程度は、放射線により人体が受ける効果の大きさをもって表すことが適切と考えられている。放射線防護上関心があるのは一点における吸収線量ではなく組織・臓器にわたって平均し、線質について加重した吸収線量である。吸収線量に放射線加重係数(従来の線質係数に代わるもの)を掛けたものを等価線量と定義し、放射線による被ばく線量を表している。等価線量の単位はSvである。
(2.7) |
HT:等価線量
DTR:組織・臓器Tについて平均された放射線Rに起因する吸収線量
wR:放射線加重係数
ある特定の種類およびエネルギーの放射線に対する放射線加重係数の値は低線量における確率的影響の誘発に関する放射線の生物学的効果比(RBE)を考慮して表 2.1.11に示すように決められた。
表2.1.11 放射線の種類による放射線加重係数
放射線のタイプ | wR |
---|---|
光子 | 1 |
電子およびミュー粒子 | 1 |
陽子と荷電パイ中間子 | 2 |
アルファ粒子、核分裂片、重イオン | 20 |
中性子 | 中性子エネルギーの連続関数(下記式による) |
出典元:ICRP Publication 103
(7)実効線量
確率的影響の確率と等価線量との関係は、照射された臓器・組織にも依存することがわかっている。実効線量は、身体の照射を受けた全ての組織・臓器の加重された等価線量の和である。実効線量の単位はSvである。
(2.8) |
ET:実効線量
HT:組織・臓器Tの等価線量
wT:組織・臓器Tの組織加重係数
(8)周辺線量当量、方向性線量当量
場の放射線量を示す値として用いられるのが周辺線量当量(Sv)、方向性線量当量(Sv)である。両者とも場の線量を示すものであるが、周辺線量当量は透過力の強いγ線などに対して、また方向性線量当量は透過力の弱いβ線などに対して測定する量である。
周辺線量当量は、直径が30cmの球形状の人体等価ファントム(人体の軟組織〔骨、肺を除く組織〕に近い元素組成を持つ物質)に放射線が平行に一様に入射したとき、入射方向にある特定深さd(mm)での吸収エネルギーで表され、全身の被ばくに対応する場合には1cmの深さの値(H*(10))が使われる。H*(10)は、その場の空間線量を表す量として用いられ、放射線の入射方向には依存しない値である。
一方、方向性線量当量は、軟X線やβ線などによる皮膚や目の水晶体の被ばく管理に使われるもので、ICRU球の放射線の入射方向に対して一定角度Ωだけ傾いた半径方向深さdの位置における線量で、H'(d,Ω)で表され、正面入射(0°方向)の70μm線量当量は H'(0.07)、3mm線量当量はH'(3)、1㎝線量当量はH'(10)が使われる。
(9)個人線量当量
一人一人の被ばく線量を示す値として用いられるのが個人線量当量(Sv)で、個人線量計は体の表面に装着して使用する。個人線量当量も放射線の透過力に関連して、全身の被ばく線量を考えるHp(10)と呼ばれるものと、皮膚の等価線量に対応するHp(0.07)がある。
個人線量計は、使用状況に合わせて個人線量当量を測定できるように設計されている。個人線量計の指示値が正しく値を示すように校正を行うが、この際には体幹部を模擬した水やアクリルで作られたスラブファントムの表面に線量計を設置した状態で行う。
このように、同じSvを示す放射線計測器でも、異なるものを計測していることに注意が必要である。