2 FA計測制御機器の技術解説

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総説

はしがき

 1970年代半ばにおけるマイクロプロセッサの登場は、それまでのデスクリート・ハードウェア中心で動いていた各分野に大きな影響を与えた。工業計器分野いわゆるプロセス・オートメーション(PA)では、アナログ計装からデジタル計装へと大きく羽ばたき、ファクトリー・オートメーション(FA)の世界でも、トランジスタ・ICそしてリレーなどでロジックを組んでいたシーケンス制御に、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)が登場し、そのコンパクトでフレキシブルな製品性が広く受け入れられ、その後の1980年代になり急速な発展をみた。当然ながら、電子化・ディジタル化の波は、センサやアクチュエータの分野でも高性能化・高精度化・コンパクト化・低価格化に拍車をかけ発展した。

 一方、1980年代後半から90年前半にかけてのパーソナル・コンピュータに代表されるコンピュータ分野の発展は、これらPA・FA分野にも大きな影響を与えた。さらに90年代以降の通信技術のめざましい発展は、PA・FAシステムの構成機器を単独機器から通信により連携された機器へと変貌させた。コンピュータ技術と通信技術によるオープン化とダウンサイジングの追い風を受け、監視制御パッケージに代表される汎用ソフトウェアパッケージが急速に広まり、それぞれの構成機器を容易に統合することができるようになってきた。

 さらに1990年代後半にはPLCとその関連機器、プログラミング言語、ネットワークの標準化が進み、パソコンの高速化、大容量化に伴うパソコンPLC(ソフトPLC)、パソコンNCが具体化してきた。オペコンとしてのパソコンはWindowsをOSとしてFAシステムの国際化に貢献しており、ソフトウェアもマルチメディアをプラットフォームとしてオブジェクト指向プログラミングがようやく定着しつつある。センサ、アクチュエータも小型化された新製品が次々と発売され、温調計などのコントローラもPLCの中に収納されるボード形の製品が出てきた。これらコンポーネントが全体としてネットワークの中に組み込まれ、21世紀に向けて自立分散型システムへと発展しようとしている。

 このような時代の流れは、それぞれ比較的個々に発展してきたPAとFA技術が、必然的に混在化する傾向に向かっているといえる。言葉を換えると、PA分野の人はFAのことをFA分野の人はPAのことを知る必要がでてきたともいえる。このような時代の要求にこたえるべく、本"FA計測制御の技術解説"を記載することにした。

1.本技術解説におけるFA計測制御機器について

 本技術解説では、電気計測器類の製造事業を営む会社から見た場合、FA計測制御機器とはどのような製品構成となるかを検討し、目次でご覧のような製品とした。FAシステム構成機器の内メカトロ中心の機器、たとえばロボットなどについては、当工業会で取り扱う製品とはいえないため割愛した。しかし、FAシステムと一言で言ってもその示す範囲は広いため、出来るだけ広範囲をカバーできるよう努めた。従ってソフトウェア・パッケージ、FAシステムそしてシステムエンジニアリングといったこれから多くの製品が出現するであろう分野の製品についても、掲載製品に偏りがあるように感じつつも、今後の製品の活性化を促す思いを込めて積極的に記載することとした。

 なお、PA(プロセスオートメーション)に用いられる工業計器と重複したり、電気測定器に属する製品もあるが、FAシステムのコンポーネントにも用いられるものはシステム的な見地から記載しているが、重複しているこれらの機器の解説は本編では省略しているので、それぞれの項目を参照のこと。

  • 信号変換器:プロセス制御機器(PA)の技術解説を参照
  • 電磁気量計測器:電子計測器の技術解説を参照
  • 電力量計測器:電力量計測器の技術解説を参照
  • 指示計:指示計器の技術解説を参照
  • セフィティシステム:プロセス制御機器(PA)の技術解説を参照

2.FAシステムの構造と各部の機能

 本技術解説に記載されている製品・システムが構成するFAシステムは、図1に示す基本概念として捉えられる。

FAシステムの構成

 同図を簡単に説明すると、製造ラインの状態をFA用センサで検出し、FA用測定器および関連機器を経由して、または直接コンピュータ・コントローラ・関連機器にその情報が送られ処理され、必要によりパッケージソフトウェアで処理され、アクチュエータに情報が伝えられ、製造ラインへ制御指令となって戻ってくる。このうち、FA用センサ、測定器、アクチュエータ/コンピュータ・コントローラ・周辺機器/パッケージソフトウェアを一つの機器と捉えたような製品としてFAシステムがある。また、このようなFAシステム全体をエンジニアリングする製品として、システムエンジニアリング製品がある。本技術解説では、このようにFAシステムを捉えることで編集した。

3.編集区分

 本技術解説では、大分類を"編"とし、以下、中分類、小分類としてある。目次でご覧のように、大分類は次の通りである。

 第1編 FA用センサ
 第2編 FA用操作端
 第3編 コンピュータ・コントローラ・周辺機器
 第4編 FAシステム・パッケージソフトウェア・エンジニアリング

 各編以下については、各々の冒頭にはしがき欄を設け、記載製品の概要と技術説明をおこなっている。
 なお、新計量法に従い、本本技術解説でも、当工業会が発行した『法定計量単位の国際単位系(SI)への統一』(1993年5月18日付)に則して単位系を表示してあることを付記する。

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