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- 6 放射線計測ガイド
- 6-2 放射線計測の基礎
- 6-2-1 放射線とは
- 6-2-1-7 β線と物質との相互作用
6-2-1-7 β線と物質との相互作用
- 1. α線
- 2. β線
- 3. 軌道電子捕獲
- 4. γ線
- 5. 自発核分裂
- 6. α線と物質との相互作用
- 7. β線と物質との相互作用
- 8. γ線と物質との相互作用
- 9. 中性子と物質との相互作用
- 10. 荷電粒子による核反応
- 11. 放射線の量と単位
高速の電子であるβ線は、物質と次のような相互作用を起こす。
- 通過経路にある原子を励起したり、電離して電子-陽イオンの対を生成する。
- 軌道電子や原子核との電気的な相互作用によって散乱され、進行方向がしばしば大きく変化する。
- 原子核のつくる電場によって大きく散乱されると、Ⅹ線(制動放射線)を放出する。
このうち、(1)はα線と共通の相互作用であり、(2),(3)はα線では無視できる相互作用である。3Hのように最大エネルギーの小さいβ線(18keV)では、空気中の最大飛程(散乱されずに直進した場合の飛程)は約0.5cmと小さいが、90Yのβ線(最大2.3MeV)では約10mと、相当の長さを飛ぶ。
β線が物質中でエネルギーを失うのは、電子との衝突に起因する電離または励起によるものと、制動放射線の放出の2種類がある。前者による線阻止能を線衝突阻止能、後者によるものを線放射阻止能という。
質量衝突阻止能(線衝突阻止能を物質の密度で割った値)は、物質の原子番号が高いほど大きく、β線のエネルギーが約1MeVまではエネルギーが高くなるに従い小さくなり、それ以上ではほぼ一定値となる。質量放射阻止能は、β線のエネルギーが約1MeVまでは無視できる。
それ以上ではエネルギーが高いほど、物質の原子番号が高いほど大きい。放射性核種から放出されるβ線ではエネルギーが低いため、放射阻止能は衝突阻止能に比べて常に小さい。
電子の質量は原子核に比較してきわめて小さいため、しばしば大きな角度で散乱される。
物質に入射したβ線は長い距離を直進することはまれで、折れ曲がった道のりを進むのが普通である。入射した面から再び出ていく場合(後方散乱)も少なくない。