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5-2-6 紫外線吸光度計測器(UV 計測器)
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1. はしがき
水質汚濁の程度を表す化学的酸素要求量(COD)の測定は、JIS K 0102「工場排水試験方法」による手分析法が基準とされているが、昭和54 年(1979 年)6 月に施行された公共水域の水質に関する第1 次水質総量規制において、手分析法と相関性がある自動計測器を使用してもよいことになっている。
UV 計測器は、COD に対してよい相関があり、メンテナンス性に優れていることから、COD 測定用自動計測器として公共河川、工場排水等で、数多く使用されている。以下、UV 計測器の測定原理、特徴及び各種排水の紫外線吸光度とCOD との相関について述べる。
2. 測定方式
ここでいうUV 計測器とは、紫外線吸収を応用して水質汚濁の一つである有機汚濁を測定するために作られた専用計測器である。光源には長寿命低圧水銀ランプが使用されており、紫外線の測定波長は253.7 nm である。測定のための試料ホルダである試料セルは、円箇型石英フローセル、水道の蛇口状のノズルから自由落下する水柱に直接光を照射する落下流水型、平行石英セルなどが多い。この計測器の対象となる試料の測定では、セル面の汚れも検出されるので、いずれも何らかの洗浄対策が必要である。表1 に、各種セルでの洗浄方式と方法をまとめた。
円筒・平行型セル方式は、試料と接触するセル表面をワイパやブラシで、定期的に洗浄する。単純な構造のため堅ろうであるが、セル表面を汚染させやすい試料を測定する場合には、洗浄周期を短くし適切に管理する必要がある。なお、洗浄中に測定を行うことは困難である。落下流水型セル方式は、試料をノズルから流下させ、水流の形状が安定に保持される位置に光学系を設けたもので、水流の太さがセル長に相当する。したがって、試料と接触する光学窓が存在せず、洗浄も不要であるが、振動や流速変化などにより水流の太さ( セル長) が変わり測定値に影響がでることもある。セル長変調型セル方式は、光源又は検出器を収納した二つの円筒セルが偏心回転し、変動範囲内で周期的にセル長が変化する。したがって、単一セルで、試料の濃度に応じたセル長を選択することができる。回転する円筒セルにブラシを設置し、測定しながら連続洗浄が可能である。また、最短セル長からの変位長をセル長とするため、洗浄困難な汚れがセルに付着した場合でも、汚れによる吸光度増加分が減じられ、試料のみの吸光度が得られる。受光系は、紫外線の選択には干渉フィルタ、可視光には色ガラスフィルタが使われ、光電変換器は、シリコンフォトダイオードが一般的に使用されている。図1 に、UV 計測器のブロックダイヤグラムの例を示す。
光源から出た光は、試料水を通り、汚濁物質による吸収、散乱をうけて減衰する。通過した光は、2 方に分岐され、一方は紫外用フィルタ、光電変換器により紫外線強度に比例した電圧Vuv となる。他方の光は、可視光受光系によりVvis となる。Vuv は、有機汚濁物質による吸収と、固形浮遊物(SS と略す)による散乱をうけている。一方、Vvis は、SS による散乱のみをうけている。また、セルに照射する光の一部を分散して、紫外、可視の比較光を作り、これを光電変換して、Vruv、Vrvis を得て、これらを対数変換器を通し、吸光度に換算した後、演算を行い出力としている。これらの関係を、数式で表してみる。光の減衰は、Lambert-Beer の法則に従うとし、
Ac :有機汚濁物質による吸収係数、
As :SS による減衰係数、
Cc :有機汚濁物質濃度、
Cs :SS 濃度、
Iuv :吸収がないときの紫外線強度、
Lvis :吸収がないときの可視光強度、
L :試料の光路長とすると、
Vuv = k1 × Iuv exp{-L(AcCc + AsCs)} ............(1)
Vvis = k2 × Ivis exp{-L(AsCs)}........................(2)
Vruv = k3 × Iuv Vrvis = k4 × Ivis
- ln(Vuv/Vruv)= L(AcCc + AsCs) ..................(3)
- ln(Vvis/Vrvis)= L(AsCs) ...........................(4)
ここに、k1= k3、k2= k4 に調整するものとすると、左辺は、紫外及び可視光の吸光度にほかならない。故に、(3)、(4)式は
Auv = L(AcCc + AsCs)......(5)
Avis = LAsCs ......(6)
となる。ここで、Auv + Avis = LAcCc が得られ、出力が有機汚濁濃度にのみ比例し、SS に関係なくなる。
一般には、この演算出力を表示させるときと、Auv を表示するとき、また双方の場合があり、またAs が波長により異なる場合もあるので、この補正を加えることもある。可視光波長は、365、402、545nm 等の波長を一本又は複数本が使われている。
3. 紫外線吸収と有機汚濁
ある種の有機物は、紫外領域に吸収をもつので、紫外線吸光法は、有機物の定性、定量に用いられてきた。これを延長し、水中有機汚濁の測定に応用する研究は、1960 代年から行われていたが、
(1) 図2 の例のように、無機物の紫外吸収光度は、硝酸イオン、亜硝酸イオン、臭素イオンについて、220 nmでは無視できないが、250 nm 以上ではほとんど認められない。
(2) したがって、250 nm 以上の吸収は、有機物にもとづくものであり、250 ~ 260 nm の吸収が、有機物含有量の目安として使える。
(3) とくに250 nm 附近では、比較的安価な低圧水銀ランプ灯から輝線(253.7 nm)が得られ、連続測定に便利である。
(4) しかし、有機炭素濃度と吸光度(250 nm)の比率は、有機物の質により異なるとされている。
一般に有機物の中でも芳香族環、不飽和二重結合を有すものは、250 ~ 280 nm に吸収をもつが、これらを持たない糖、有機酸、アミノ酸、アミン、アルコール類は、紫外線を吸収しない。代表的な純物質の同一濃度における紫外スペクトルを、図3 に示した。芳香族類の紫外線吸収の位置などが明らかである。また、同様な純物質の254 nmでの吸光度と濃度の関係を、図4 に示した。しかしながら、生活系排水の処理水、一般河川水では、有機物の形態が類似しているためか、UV 計の値とCOD の値の比は、地域に関係なく似通っているとされている。
4. UV 計測値とCOD の相関
図5 に、河川の上流から下流までの試料についての、254 nm における吸光度(以下A254 と記す)とCOD の相関例を示す。図6 は、都市の下水処理排水の吸光度とCOD の相関例である。図7 は、石油化学工場の処理排水の吸光度とCOD の相関例である。おのおの感度に差はあるが、よい相関性を示している。しかし、これらの例からも類推できるように、水質が変動するとき、固形浮遊物(SS)が多いときは相関が悪くなることがあるので、UV計測器をCOD 計測器として使用する場合、吸光度とCOD の相関を事前に確認する必要がある。
5. 保 守
保守項目としては、計測器が乾式法であるため少なく、セル面の洗浄、ワイパ等の管理、試料水配管系の汚れ除去、ランプの劣化によるドリフトの補正を含む校正等が主である。
校正には、ゼロ水及びフタル酸水素カリウム溶液によるスパン校正液が使われるが、通常の感度チェックには、光学フィルタを使用するものもある。
5. 簡易UV 計
上記のようなUV 計測器のほかに、試料採取及び記録の機能を除いた簡易UV 計がある。紫外線吸光度を計測して有機性物質を計測するには、実験室用の分光光度計が使用できるが、簡易UV 計は、一般的に試料セルのセル長は10 mm の角形の石英セルである。ただし、測定試料によって、20 mm 又は5 mm セルを選択して使用することも可能である。