5-2-3 濁度・色度計測器

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1. はしがき

 濁度計測器は、液体の濁りの度合を計測する機器であり、環境監視用やプロセス工業用として広く用いられている。環境管理に関連する主な用途としては、河川水の濁度、下水処理場の排水の濁度、工場排水の濁度測定などがあり、また環境ではないが、人々の生活に直結しているものとして、上水の濁度の測定がある。
 濁度の定義並びにその単位は、JIS K 0101「工業用水試験方法」で、「濁度とは、水の濁りの程度を表すもので、視覚濁度、透過光濁度、散乱光濁度及び積分球濁度に区分して表示する。カオリン標準液と比較して測定する場合には、" 度(カオリン)" を単位とし、ホルマジン標準液と比較して測定する場合には、" 度(ホルマジン)" を単位として表す」と定められている。なお、平成15 年(2003 年)厚生労働省令第101 号及び平成15 年(2003 年) 厚生労働省告示第261 号では、「水道により供給される水」の標準液は、" 度(ポリスチレン系粒子懸濁液)" を単位とする。一般に「ポリスチレン系粒子懸濁液」は、「PSL」と呼ばれている。
 濁度計測器は、この定義にもとづいた標準液を作り、これを基準にして計器の目盛校正を行い、濁度を表示するようにした計測器である。標準液の種類及び測定方式により、感度が異なる。また、標準液と実際の測定液の感度も、測定方式により異なる。濁度測定には、この点に留意して、基準を明確にしておくべきである。
 現在市販されている濁度計測器は、いずれも光の透過又は散乱又はその両者を利用したもので、測定液中を通る光が、吸収、散乱又は屈折などにより、その強さが変化するのを測定する原理にもとづいている。その主要な測定方式は、(1)散乱光・透過光法 (2)表面散乱光法(3)透過光法 (4)散乱光法 (5)積分球法 (6)微粒子カウント法である。
 以下に、それぞれについて原理及び特徴を記すが、とくに、自動連続測定器として広く市販されているものに重点をおき説明する。なお、濁度計が関連する環境関連法律としては、水質汚濁防止法、下水道法、海洋汚染防止法及び河川法などがある。また、環境測定用濁度自動計測器としては、JIS K 0801「濁度自動計測器」において、(1)散乱光・透過光法、(2)表面散乱光法が規定されている。
 色度計測器は、色度合を計測する機器であり、用途は濁度計測器と同様である。色度の測定は、白金・コバルトによる色度と、刺激値Y 及び色度座標x、y による色度がある。白金・コバルトによる色度は、試料に溶存又はコロイド状で存在する物質による淡黄色から黄褐色系の色の場合に、適用される。その他多様な色の試料を測定する場合に刺激値Y 及び色度座標x、y による色度が用いられる。 環境中の色度の測定は、白金・コバルトによる測定が一般的で、白金・コバルトによる測定方式について説明する。なお、濁度と色度は、測定方式が同じ場合、お互いに干渉し合うので、同時に測定・補正し濁度と色度の、両方測定可能な濁色度計測器もある。

2. 濁度計測器の測定方式

2.1 散乱光・透過光法

 測定液に光を投入し、その透過光とそれによって生ずる散乱光の両者を測定し、その両者の比が液中の懸濁物質の濃度に比例することを利用して濁度を知る方式である。この方式では、原理に示す通り両者の比をとっているため、電源変動やランプの劣化の影響を受けない利点がある。また、液の色の影響に関しても、互に打ち消し合い、それによる変動は非常に少ない。同じ理由で窓の汚れに対しても、あまり影響され難い特長を持っている。このようなことから、この方式のものも連続測定用として開発され、広く使用されている。実際の計測器では、より性能の向上、安定性が追求され、色々の工夫が施こされている。たとえば、窓の汚れの影響を無視できる程度にするため、超音波洗浄機能を内蔵させたり、窓を必要としない落下流水型を開発したりして、長期間の使用に耐えるようにしている。図1 に、散乱光・透過光法による濁度計測器の例を示す。

散乱光・透過光による濁度計測器の例

2.2 表面散乱光法

 測定液面に光を当て、その液面からの散乱光を測定し、その散乱の強さが液中の懸濁物質の濃度に比例することを利用して濁度を知る方式である。この方式では、透過光方式と異なり、測定液に接する窓がないため、窓の汚れによる誤差の発生が無いという特長がある。着色液の影響も、表層部の散乱を測定することによって、実用上支障にならない程度に減少させることが可能であり、連続測定用のものが開発され、広く使用されている。
 実際の計測器では、光源ランプの劣化の影響を無くする回路の採用、誤差原因となる液中の泡の除去及び迷光の防止など、種々の対策がとられて実用に供されている。図2 に、表面散乱光法による濁度計測器の例を示す。

表面散乱光法による濁度計測器の例

2.3 透過光法

 これは、測定液槽の片側から光を当て、その透過光を相対する側で測定し、その値の減衰の度合が、液中の懸濁物質の濃度に関連することを利用して濁度を知るもので、もっとも基本的な原理にもとづく簡単なものである。そのため着色液の影響や窓のよごれの影響を受けるので、上水用として多いが、環境測定用としてはあまり商品化されていない。

2.4 散乱光法

 測定液中に光を投入し、液内部における散乱のみを測定し、その散乱光の強さが、液中の懸濁物質の濃度に比例することを利用して濁度を知る方式である。2.2 の表面散乱光法では、液の表面部分の散乱光を測定しているが、透過光法では、液中の散乱光を測定している。この方式のものは、液をサンプリングし、検出部で光を投入し、それと90 度方向の散乱光を測定するものや、光源・受光部を一体として液中に入れ、液中での散乱光を測定するものがある。これらのものは、濁度計及びSS 計として広く実用されている。

2.5 積分球法

 これは、JIS K 0101「工業用水試験方法」で示されている濁度の測定方式で、光源からの平行光線をセルの液層に入射させると、その光線は、平行のままの光線と液中懸濁物質による散乱光線となって積分球に入る。積分球内にもうけてある光電池で、散乱光と全入射光をそれぞれ測定し、この両者の比が液中の懸濁物質の濃度に比例することを利用して濁度を測定する。散乱光と全入射光は、それぞれ光出口にライトトラップと白板を入れ替えることによって得られるようにしてある。このような原理のため、試験室での測定に適している。連続測定のためには、白板の位置にもう一つの受光素子を置くことになり、2.1 で述べた散乱光・透過光法の一形式といえる。

2.6 微粒子カウント法

 半導体レーザを用いて微粒子を検出する方式で、微粒子数が少ない低濁度( 2度以下) の測定液に適している。光ビームを測定液に照射すると、微粒子により光は散乱される。前方散乱光を集光し、電気信号に変換すると微粒子粒径に対応する波高値を持つパルス信号が観測される。パルス数は、測定液の微粒子個数濃度に比例する。波高値をN区分し、粒径区分毎の微粒子個数濃度(n)を測定する。平均散乱断面積(C)を乗じて濁度(D)を演算する。
 D =Σ niCi (i = 1 ~ N)
 この方式は、濁度と微粒子個数濃度の測定が可能、ゼロ点校正が不要の利点があり、広く低濁度測定に使用されている。

3. 色度計測器の測定方式

 白金・コバルトによる色度測定は、標準色列と比較して測定する比色方式と、390 nm 付近の吸光度を測定する吸光度方式がある。 どちらも白金・コバルト色度標準液によって校正される。

3.1 連続式色度計測器

 プロセス用としては、吸光光度法による連続式色度計測器が用いられている。一般に、上水では色度が低いため、高感度のものが要求される。測定範囲としては、0 ~10 度、0 ~ 20 度付近である。また、測定方式が吸光光度法であるため、試料水中の縣濁物による濁度の影響を受け易く、これを避ける為に2 波長吸光光度法により濁度補正を行うと同時に、濁度と色度を同時に測定可能としたものがある。その他、ゼロ校正用のフィルタを装備したもの、濁度計と同じく誤差原因となる液中の泡の除去及び迷光の防止など、種々の対策がとられて実用に供されている。
 図3 に、2 波長吸光光度法による色度・濁度計測器の例を示す。

2波長吸光光度法による色度・濁度計測器の例

3.2 ポータブル式色度計測器

 比色方式と吸光度方式がある。小型で現場に携帯し、手軽に色度の測定が可能である。また、濁度の測定も可能なものが多い。

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