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6-2-2-6 シンチレーション検出器
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- 5. 半導体検出器
- 6. シンチレーション検出器
- 7. 熱ルミネセンス(TLD)素子
- 8. 光刺激ルミネセンス(OSLD)素子
- 9. 蛍光ガラス(RPL)素子
- 10. 固体飛跡線量計(SSNTD)
- 11. 放射線検出器の適用分類
(1)シンチレータ
ある種の物質に放射線が入射すると、物質内の電子が高エネルギー状態(励起状態)となり、これが元の状態(基底状態)に戻るときにそのエネルギー差分を光(蛍光)として放出する。これがシンチレーションと言う現象で、この現象を起こす物質をシンチレータと言う。シンチレータは大別して無機シンチレータと有機シンチレータがある。
無機シンチレータはシンチレーション光に対しほぼ透明な結晶であり、平均の原子番号が大きくなるよう工夫されている。これは原子番号が大きい程、γ線に対する感度が高い為で、代表的なシンチレータにNaI(Tl)、CsI(Tl)がある。ここで括弧内の物質は励起した電子を捕え易くする為に混入される不純物である。なお、これらの結晶は程度の差こそ有れ、潮解性を持っており、封入容器が不可欠である。
α線に感度を有する無機シンチレータにはZnS(Ag)がある。これは白色の粉末状である為、溶剤に溶いて透明基板状に薄く塗布する。
一方、有機シンチレータにはプラスチックシンチレータ、液体シンチレータ等があるが、何れも無機シンチレータに比べて100倍前後の速い減衰時間を持っている。この早い応答を利用してγ線の高速計数、高計数率測定にプラスチックシンチレータが用いられる。また、水素原子主体で原子番号が小さい為にγ線感度が低く、特別な封入も不要なことから、1mm厚程度のプラスチックシンチレータはβ線測定に多用されている。
液体シンチレータは被測定物を溶かし込んで測定出来る為、α、β核種を60%以上の効率で検出できる。他に包含される大量の水素原子を利用して高速中性子を検出する反跳陽子形液体シンチレータがある。
図2.2.6-1にNaI(Tl)シンチレータの外観例を示す。
図2.2.6-1 NaI(Tl)シンチレータの外観
(2)光電子増倍管
シンチレータの発光は極めて微弱である為、光電子増倍管と組合せて通常の電子回路で使用可能なレベルの電流パルス信号に変換する。光電子増倍管は光の入射面(光電面)に光量子を光電子に変換する半導体が取付けられており、この電子をダイノードと呼ばれる多段電極で加速し百万倍前後に増幅する。その為、光電子増倍管に印加するバイアス電圧は1000V近くまで必要な場合がある。なお、バイアスを印加した直後は動作が安定しない為、高精度な測定が必要な場合は十分なランニング時間を要する。また、長期にわたって安定した動作を要求される場合にはエージングにより初期ドリフトを取り除く必要がある。
図2.2.6-2に標準的な光電子増倍管の外観例を示す。
図2.2.6-2 光電子増倍管の外観
(3) SPAD(シングル・フォトン・アバランシェ・ダイオード)
SiーPM(Si シリコン・フォトマルチプライヤ)
SPAD、SiーPMと呼ばれる光半導体検出器は、光電子増倍管に匹敵する高い増幅率を有する。この検出器は多数の微小なアバランシェ・ダイオード(APD)が連なった構造となっており、それぞれの微小なAPDがガイガーモードと呼ばれる高い増幅率を発生する領域で動作する。
光電子増倍管と比べ小型、軽量、薄型、磁場耐性といった特徴があり、印加するバイアス電圧も 100V 以下で動作が可能である。
また小型の素子を多数並べることで、大面積の検出器を作成することも可能である。
なお、増幅率には温度依存性があるため、安定した動作が要求される場合には、温度変化 に対し動作電圧を微調整し温度補償する必要がある。
図 2.2.6-3 に標準的なSiーPM製品とSiーPMとシンチレータを結合した放射線検出部の外観例を示す。