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- 1 プロセス計測制御機器の技術解説
- 1-4 プロセス用監視制御システム
- 1-4-2 分散形制御システム:DCS(ディジタル計装制御システム)
1-4-2 分散形制御システム:DCS(ディジタル計装制御システム)
- 1. 生産管理システム:MES(プロセスコンピュータシステム)
- 2. 分散形制御システム:DCS(ディジタル計装制御システム)
- 3. バッチ制御システム
- 4. PLC計装制御システム
- 5. 伝送システム
- 6. 多点監視制御システム
- 7. その他の専用装置
DCSは、監視、フィードバック制御、シーケンス制御などの機能を持つ計測制御用のディジタルシステムである。1975年に日本の工業計器メーカおよび総合電機各社が一斉にDCSを発表した。1979年にはシングルループコントローラの登場により分散の究極が実現され、また、同時期に中小規模向けのシステムも登場した。
その後情報の集中の観点より監視、操作面での拡充が大きく進展し、さらに近年では、電気、計装、コンピュータ統合システム化の傾向にある。
今後は製造システムの中核となる位置づけとして、上位の生産計画、操業計画等の機能とより密にリンクがなされ運用が図られよう。
技術的には、実用化の近いフィールドバスによりフィールド機器との連携がなされ、精度の高い監視制御が可能になると共に保守保全面でのマルチメディア技術の適用、急激にコストパフォーマンスを上げてきたパソコンのシステム機器としての採用、さらに制御ソフトウェア生産性向上のためのCASE(Computer Aided Software Engineering)機能の充実などが予測できる。また、今や、DCSは30年を経過し、初期に導入されたDCSシステムの更新がおこなわれている。既存システムの更新にあたり、システムのライフサイクルの観点から、更新技術の開発がなされている。
2.1 コントロール機能
- ハードウェアとしては、16ビットおよび32ビットのマイクロプロセッサが用いられているが、後者の方が主流となっている。
- コントローラ1台のPID制御能力は1ループから数百ループまでありまちまちである。
- 信頼性確保のためコントローラは冗長化可能である。
- 制御機能は、計装(I)の中心であるフィードバック制御に加え、シーケンス制御強化・プログラマブルコントローラの接続等により電気制御(E)も実行する。IE制御の統合が可能である。
- 制御アルゴリズムの構築は、ソフトウェア機能モジュールの組み合わせ、POL(Problem Oriented Language)、デシジョンテーブル等の問題向け言語によっている。
- あいまいさを含むプロセスの制御にファジィ制御の適用。専門家のノウハウを知識ベース化したAIエキスパート制御などが、一部実用化されてきている。
- フィールドバスの導入で、基本的なコントロール機能をフィールド機器で行うことができ、コントロール機能自体の分散化が可能となる。
2.2 ヒューマンインタフェース機能
- ヒューマンマシンインタフェースは主としてカラーCRTを装備しておりフルグラフィック高精細度CRT、タッチパネルの採用、CRTの2段積、大画面CRT接続、音声装置等の採用によって、画面の見やすさ、操作性の向上を図っているものが多くなった。
最近では、ITV(Industrial TV)画像の取り組みなどマルチメディアの積極的な活用により、CRTの高情報化が図られている。
- プロセス監視・操作に必要な表示画面は標準的に用意されている。
また、応用システム機能を実現するため、対話形式で作成できるグラフィック画面、帳票も可能となっているものも多くなっている。さらにマルチウィンドウ機能をサポートしているものも多い。 - 電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)の情報を同一の画面上で操作・監視できるものもある。
- 簡易計装システムでは、パソコンにプロセス計測制御用の操作監視パッケージを搭載し、操作監視用ステーションとして用いるようになっている。
2.3 エンジニアリング機能
- システムの構築、保守に必要なエンジニアリング作業の効率向上を目的とし、ワークステーションやパソコン等の汎用マシンを利用してエンジニアリングを行うシステムが多い。フィールドバスの導入により、フィールド機器とDCSの双方向の情報の交換が可能となり、パソコン、または、ワークステーションからフィールド機器の状態監視、保守ができる。
- コントローラ部のエンジニアリングツールは、電気、計装の各種の用途に対応できるようラダー、シーケンシャルファンクションチャート(SFC)、計装用モジュール言語等が種々用意されているものも多くなった。
- ヒューマンインタフェース部の計装標準画面。グラフィック画面ウィンドウ指定等が、プログラムレスで対話型でできるツールが用意され、簡単に作れるものが多くなっている。
- プラントのシミュレーション機能を導入し、システムの構築からテストまでを一貫して行えるものもある。
- 予防保全、予知保全機能を充実し保守保全作業を合理的に行えるようにしているものもある。
2.4 コミュニケーション機能
- DCSはシステム内部通信専用に、2重化可能な高レスポンス性を備えるシステム専用バスを持っている。さらに、上位コンピュータシステムとの通信用にイーサネット等の汎用ネットワークを備えるシステムが増加している。
- システム専用バスは高速化の傾向にあり光通信を使用するものが増え、伝達速度も100Mbpsの伝送速度を持つものもでている。
- システムのオープン化ニーズにより、汎用LAN(たとえば、Ethernet FDDI)に準拠するシステム専用バスもある。簡易計装では、イーサネット自身を制御LANとして採用するケースが多い。
- 異種システム、たとえば上位計算機、プログラマブルコントローラ、各種計測機器との円滑な接続のために各種標準プロトコルをサポートするゲートウェイが用意されている。
2.5 フィールドバス機能
フィールドバスインタフェースを持つ機器が出てきている。フィールドバスという共通のインフラを持つことにより、システム選択時の自由度が向上する。
- ネットワーク上の全ての機器が、双方向でのデータの交換ができるため、簡単な制御については、フィールド機器が担い、制御機能が分散化されていく。
- アナログ時代に比べ高度な情報を付加することができるため、コントロールルームでのフィールド機器の状態監視が可能となる。
- フィールド機器の保守もネットワーク上のマシンから可能となって行くであろう。
2、6 コンピュータ機能
- 生産管理、データベース用、最適化計算等のためにコンピュータステーションを持つものもある。
- オペレータの運転支援やプラントの設備の診断を実行するAIエキスパートシステムもある。
以上解説したようにきわめて広い範囲のプロセスを対象とし、かつフレキシブルに機能を適用できるようにしているため、非標準まで考慮すると各システムの規模あるいは機能の範囲が明確でない点もある。そのため従来のプロセスコンピュータによるシステムと比べて機能上の差異が明確でなくなっている面もある。
ただ、DCSにおいては、従来のプロセスコンピュータのような一品生産を排し、徹底した標準化をすすめてコスト低減を図っている。
従って、標準仕様と非標準仕様とでは、価格上大きな差があるのが普通である。DCSの導入、選定にはこの点の考慮が必要である。
またDCSのラインアップが出揃った現在では計画プロセス、プラントに良く適応する特徴を持つシステムを選ぶとともに、異種システム(上位計算機等)との機能分担を十分考慮して導入する必要がある。
以上のように、DCSは、機能の高度化および範囲の拡大化が進み、ますます総合システム化の傾向にあるといえる。
2.7 リノベーション機能
1975年に誕生したDCSは30年を経過し、初期に導入されたDCSシステムの更新がおこなわれている。既存システムの更新にあたり、システムのライフサイクルの観点から、更新技術の開発がなされている。
- 資産(ハード、ソフト、エンジニアリング、保守、計装配線、等)の有効活用
- 段階的な更新
- システムに付加価値をつけた更新