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3-6-4 カラーバーパターン発生器
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1 カラーバーパターン発生器
一般にカラーバーパターン発生器という場合、カラーバー信号( 2 に解説)を含む数種類のテストパターンを内蔵し、ITU-R BT.470 などの放送規格に準拠または適合した映像信号発生器を指す。したがって、広義には映像信号を出力する信号発生器はカラーバーパターン発生器に含まれるが、ここではコンポジット映像信号のパターン発生器をカラーバーパターン発生器と呼ぶ。
実際の製品名では、パターンジェネレータ、ビデオシグナルジェネレータなどが挙げられる。
2 カラーバーパターンとは
カラーバーパターンとは映像機器を試験するテスト信号の一種である。カラーバーパターンには用途に応じて多くの種類が存在する(図 1 参照)。その中で最も一般的なものはフルフィールドカラーバーと呼ばれるもので、図 1 a)のようにテレビ画面で見たとき横方向に 8 色(白、黄、シアン、緑、マゼンタ、赤、青、黒)が同じ幅で並んだ状態に見える。以降は、このフルフィールドカラーバーで説明する。
2.1 カラーバーの成り立ち
カラーテレビは、RGB の 3 原色により色を再現する。カラーバーは、この 3 原色を飽和レベルにした状態の ON/OFF の組合せによってできている(図 2 参照)。
一般的に使用されるカラーバーの飽和レベル(飽和度と呼ばれる)には、100 % と75 % の2種類があり、75 % にはさらに白バー(RGBすべてが ON)だけ 100 % にしているタイプもある。そこでカラーバーの識別に「100.0.75.0」のように表記される(ITU-R BT.471)。
この並びは、ペデスタルレベルを 0 とした場合の各バーの飽和レベルを表しており、順に白バーの飽和レベル、白バーのオフセット、色バーの飽和レベル、色バーのオフセットを表している。
通常、日本のコンポジットのカラーバーは、100.0.75.0 が用いられる。これはコンポジット信号化したときに白バーと黄色及びシアンのピークが揃うため、各種調整が行いやすいというメリットがあるためである(図 3 参照)。
それに対し、コンポーネント(ハイビジョンも含む)では、100.0.100.0 が用いられる場合が多い。これは色差信号のレベルが 100 % となるのが RGB 100 % のときであるため、その方が管理しやすいからである。したがって、コンポーネント信号をコンポジットに変換して使用する場合などは注意が必要である。
2.2 その他のテストパターン
カラーバーパターン発生器には、カラーバーの他にも幾つかのパターンを備える機種が多い。一般的なパターンを表 1 に掲載した。
3 カラーバーパターンの発生方法
カラーバー信号は、RGB を順番に 1/0 を切り換えて合成することを走査線ごとに繰り返すことで発生できる。したがって、RGB の基となる信号発生機構と走査線方向に一定の時間割合で 1/0 の切換えをするための水平時間軸発生機構、走査線ごとに繰り返すための垂直時間軸発生機構、そしてテレビを同期するための水平・垂直の同期信号発生機構を備えればよいことになる。
a) 基本的なカラーバーパターン発生器の構成
図 4 は、カウンタを用いたカラーバーパターン発生器の構成例である。
コンポジットエンコーダに入力する RGB 信号を、水平時間軸カウンタとデコーダで発生する仕組みである。水平時間軸カウンタは、同期信号発生器の有効映像期間出力により、有効映像期間だけカウンタとして動作する。カウンタ出力は、RGB 各デコーダにより、RGB それぞれに必要なタイミングで出力される。カラーバーパターンの場合、具体的には G 出力は有効映像周期の半分、R 出力は 1/4、B 出力は 1/8 周期の方形波になる。
コンポジットへの変換は、ITU-R BT.601、ITU-R BT.470 に準じたエンコーダを用いる。
図 4 の構成は、フルフィールドの信号をデコーダのパラメータを変えることで多様なパターンを作ることができるが、画面の垂直方向に変化するパターンや中間レベルを必要とするパターンでは回路が複雑になる。また、RGB は ON/OFF で作られるため、放送規格に準拠するような信号品質を得にくいという問題もあり、現在では次項に述べるデジタル発生式が主流になっている。
b) デジタル発生式カラーバーパターン発生器の考え方
図 5 はデジタル発生式カラーバーパターン発生器の構成例である。図のように、デジタルメモリと D/A 変換器を組み合わせたデジタル信号発生方式が一般的になっている。この方式は、コンポジット信号をデジタルサンプリングしたデータをメモリに記憶して、順番に呼び出して D/A 変換する。基本的な考え方は、1 画面分=垂直ブランキング期間を含む 1 フレーム分のデータをメモリに記憶させて繰り返して読み出す仕組みとなる。
実際にはカラーバーなどのテストパターンは、走査線ごとに細かく絵柄が変わるパターンは少なく、同じ走査線データが並ぶパターンが多い。例えば、フルフィールドカラーバーでは、有効画面内の全走査線が同じ絵柄になる。そこで信号発生器では 1 走査線分のデータを繰り返し読み出せばよい(実際の NTSC コンポジット信号では、サブキャリア信号の位相が走査線ごとに反転するので、2 種類のデータが必要である。)。また、図 1 b)のように何種類かの走査線データが必要なパターンでは、垂直アドレス メモリにより、水平データメモリの領域を切り換えて走査線ごとの出力データを選択する。
デジタル発生方式では、8 bit~12 bit の分解能で波形データを作ることが多く、波形のディテールを作り込込むことが可能で、ITU-R BT.470 などの放送規格に適合する品質を持つカラーバー信号を発生することが割合と容易になるため、現在発売されているカラーバー発生器の多くは、デジタル信号発生方式が用いられている。
4 カラーバー製品の実際
数年前まではテレビ放送はコンポジットであったため(ハイビジョンの実用化試験放送は行われていた)、市販テレビはコンポジット信号とその派生である S 端子(Y/C 信号)だけを入力できた。そのためカラーバー発生器もコンポジットと S 端子出力だけを装備していた。
しかし現在ではデジタル放送時代となり、ハイビジョン放送が始まり、映像信号の入力インタフェースもアナログコンポーネント( D 端子)やデジタルコンポーネント(HDMI)と多様化している。そのため、生産ライン用信号発生器も出力信号の複数のフォーマットを装備する対応をしており、最近では、コンポジット専用の信号発生器が新規に発売されることは、まれになっている。
資料提供
- 各種カラーバーパターンの例 リーダー電子株式会社
- コンポジットカラーバーパターンの信号波形 リーダー電子株式会社
参考文献
- ビデオ信号の基礎とその操作法 今村元一著 CQ出版社