3-1-1 クランプ電流計

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 電流は電圧、電力などと同様、重要な電気量であるにも関わらず、被測定電路を切断して計器を挿入する必要があり、測定が困難な場合が少なくなかった。特に運転が中断できない設備機器などでは、電流が測定できないことで解析不可能な項目もあった。
 このような背景から、被測定導体を挟み込むだけで簡単に測定できるクランプ式電流計が製品化され、現在広い産業分野で使用されている。

 ここでは、クランプ式電流計の動作原理、検出方式などについて、記述する。

1 クランプ電流計の種類と基本原理

 クランプ電流計は当初、変流器( CT )式が主体であったが、現在に至るまで、表1に示すように様々なクランプ電流計が製品化されている。
 動作原理や検出方式が多岐に渡っているが、基本的には被測定電流によって電流路の周囲に誘起される磁界を検出することによって、電流を測定している。
 通常、高透磁率磁性材料を使用した磁気回路(磁気コア)を構成し、被測定電流を挟み込むことによって、磁気コア中に流れる磁束を様々な方式で検出している。また、磁気コアを持たず、空芯コイルによって検出している場合もある(ロゴスキーコイルなど)。

クランプ電流計の種類と検出方式

2 クランプ電流計の各種動作原理、検出方式

2.1 計器方式

 図 1 に示すように磁気コアと計器を組合せた構造で、交直電流計や力率計などに利用された。しかし、特性や測定範囲、形状などに難点があり、現在ではほとんど使用されていない。

2.2 変流器(CT)方式

 磁気コアにコイルを巻いた変流器構造のセンサ(図 2 )で、多く使用されている。比較的簡単な構造だが、CT の動作原理上、直線性や測定範囲が広いことが優れている点である。しかし、交流専用であり、直流電流の検出はできない。

計器方式と変流器方式の図

2.3 ホール素子方式

 図 3 に示すように、磁気コア内の空隙部にホール素子などの磁電変換素子を配置し、被測定電流によって発生した空隙部の磁束密度を検出する方式である。
 この方式は交直の電流検出が可能である。また、ホール電圧が制御電流および磁束密度の2変数に比例することから、電力センサとしても利用できる。

 ただし、この方式では磁気コア内に誘起された磁束を検出するため、磁気回路の設計によって性能が決定される。磁気コア材料としてもヒステリシスの小さいパーマロイなどの材料を使用する必要がある。また、検出感度が磁気回路中の空隙によって影響を受けるため、磁気コアの突合せ状態を良い状態で保持することが重要でなる。

ホール素子方式

2.4 フラックスゲート方式

 磁気回路中の空隙近傍にフラックスゲート形磁界センサを配置し、磁界を検出することにより、電流を測定する(図 4 )。
 フラックスゲート形磁界センサは、以下のような動作原理により磁界を検出する。磁性薄片にコイルを巻き、高周波電流により飽和領域まで励磁すると、磁界に比例した偶数次高調波成分が出力される。ホール素子と比較し、オフセットドリフトが非常に小さい特長があるため、電流センサとしても同様の特長を有することができる。

 この方式を使用し、以下で述べる零磁束制御形と組合せることにより、特性の良好な電流センサが可能である。

2.5 交流零磁束制御方式

フラックスゲート方式

 変流器方式では直流あるいは超低周波数領域では動作しない。そこで、増幅器を用いて磁気回路を含めて負帰還を掛けることで、より低い周波数までの電流を検出できるのがこの方式である。
 負帰還効果により、磁気回路の非直線性の影響を小さくでき、優れた特性が得られる。ただし、被測定電流による磁気コア中の磁束を帰還電流による磁束で打消す方式のため、消費電流が被測定電流に比例して大きくなる。図 5 にこの動作原理図を示す。

交流零磁束制御形

2.6 交直零磁束制御方式

 前記の検出コイルの代わりに、ホール素子などの磁電変換素子を使用し、直流電流の検出を可能にしたのが、この方式である。図 6 にホール素子を使用した場合の構成例を示す。
 検出素子はホール素子の他、フラックスゲート形磁界センサを使用する例もある。

交直零磁束制御形

3 クランプセンサの磁気回路

 クランプ電流計には様々な方式があるが、動作原理上から、ほとんどの場合、磁気回路が構成要素になっている。
 この磁気回路には漏れ磁束、透磁率の非直線性、磁気飽和、帯磁、各種損失など、磁性材料特有の問題がある。これらは、クランプ電流計の性能や機能に大きな影響がある。クランプ電流計の磁気コアには、その要求される特性に応じて、使用する磁性材料や磁気回路の検討が必要である。

 代表的な磁気コア材料を表2に示す。この他、方向性珪素鋼板(注 1 )などが使用される。

代表的な磁気コア材料の表

 珪素鋼板はヒステリシスが大きく、大電流用として使用される。方向性珪素鋼板では磁気特性が改善されている。
 パーマロイは Ni と Fe の合金で、優れた磁気特性を有する。低電流測定用のクランプ電流計の磁気コアや磁気シールドには初透磁率が大きく、保持力の小さなパーマロイ PC 材を使用し、大電流測定用には飽和磁束密度の大きなパーマロイ PB 材を使用する。
 これら金属系磁性材料は電気抵抗が低く、うず電流損失(注 2 )が大きい。これを防ぐため、薄板(~0.5 mm程度)を積層して磁気コアを構成している。

注1:方向性珪素鋼板
 従来の珪素鋼板では面内において磁気特性が等方的であるのに対し、方向性珪素鋼板は圧延方向に優れた磁気特性を有する。

注2:うず電流損失
 金属中で磁束変化があると、電磁誘導により起電力が発生する。この起電力によって電流(うず電流)が流れ、ジュール熱となって電力を消費する。

参考文献

  1. クランプセンサ―クランプセンサにおける技術と応用製品―、(財)浅間テクノポリス開発機構 平成2年度浅間ハイテクスクール「電子・電気機器開発のポイント」テキスト
  2. 磁気工学の基礎I、II、太田恵造著、共立全書

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