1-1-5-2 液体分析計
2.1 用途
- プロセス管理用分析計
合成化学プラント、上下水プラント、純水プラント等の生産プロセスにおいて液体の品質管理を目的として水の純度または生産物の特定成分を分析し、プロセスの制御用としても使われる。防爆形と非防爆形がある。 - 環境監視用分析計
水質汚濁防止法等の法令により排水規制を受けている特定事業場または水質の常時監視が義務付けられている河川、湖沼、海域で用いられる。測定機器についてはプロセス管理用分析計と共通性はあるが、特に水質モニタとして複数の測定項目を一架台に納めたものもある。測定結果の信号はデータロガーに接続されるものやテレメータに接続されるものもある。近年ではデジタル通信にてパソコン等の収集装置に直接接続されるものがある。
2.2 測定方式
(1)電気化学式分析計
物質の電気的、または電気化学的性質を利用した電極を用いた検出系をもつ分析計を、この分類に入れている。
(a)電気滴定式分析計
滴定機構を有し、電極等で終点検出をして容量分析を行うものであり、終点検出には種々の原理を応用した検出器が用いられる。
アルカリ度計、COD(化学的酸素要求量)測定装置、プロセスタイトレータ等がこれに相当する。
(b)ポーラログラフ式分析計
この分析計は作用電極、参照電極、対電極で構成される。参照電極を基準として作用電極の電位が一定になるように作用電極と対電極間の電位を変化させたときの電流を測定して目標物の定量を行う方法である。また参照電極を省略し作用電極と対電極間に一定の電位差をかけて行う方法もある。回転電極を用いた残留塩素計と隔膜法を用いた溶存酸素計がプロセス用に用いられている。
残留塩素計は無試薬式と有試薬式があり、前者ではフリー塩素を、後者ではトータル塩素とフリー塩素を測定する。無試薬式は保守が簡便であるが、試料のpH範囲が限定され、また共存物の影響により精度が落ちる場合があるので、機種選定には注意を要する。
隔膜式溶存酸素計は隔膜を通して拡散してくる酸素を、使用電極には金または白金、対電極には銀を用いて、塩化カリウム等の電解液中で一定印加電圧のもとでの電流値の変化として検出する。
(c)電量式分析計
電量式分析法には定電位電量法と定電流電量法がある。前者は一定電位のもとで電解電流がほぼゼロになるまで電解を行い、それに要した電気量から溶液中の非電解物質の定量を行う。後者は一定電流で目的物質と定量的に反応する中間物質を電解発生させ、それに要した電気量から非電解物質の定量を行う方法で反応終点は電位差法、比色法などにより検出される。この方法はBOD(生物的酸素要求量)計に用いられている。
(d)電位差式分析計
電気化学式分析計の中で最も広く用いられている方式で、pH測定、ORP(酸化還元電位)測定、イオン濃度測定等、各種プロセス用分析計がつくられている。pH測定には、ガラス電極、ORP測定には白金または金電極等が用いられている。また各種の陽イオンや陰イオンの濃度測定には、それぞれ選択して測定できる各種イオン電極が用いられている。これらの指示電極と組合せる比較電極は一般的に塩化銀電極が用いられている。
(e)電気伝導率式分析計
液体の電気伝導率変化を検出することにより、その水の純度、または溶解塩類濃度を知ることができることから広く用いられている。市販されている主な電気伝導率計を原理的に大別すると、電極法と電磁誘電法があり、電極法は電気伝導率の非常に低いものから高いものまで広範囲に測定ができ、電磁誘電法は電気伝導率の高い領域で用いられている。
(f)ガルバニ電池式分析計
電解質溶液中に2種の金属電極を浸し、回路を構成すれば、それぞれの電極に酸化または還元反応に応じた電流が流れる現象を利用したものであり、代表的なものとして隔膜式溶存酸素計がある。隔膜を通した酸素により電流が生じるが、電流の大きさは隔膜を通した酸素の量に比例する。
(2)光式分析計
光式分析計では、光源、または励起発光機構と受光器によって構成されたプロセス分析計をまとめて掲載した。主なものとして紫外、可視、赤外の領域の吸収スペクトルを利用したもの(分散形、非分散形および波長方式等)、蛍光物質の蛍光強度によるものおよび光散乱等によるものが含まれる。
(a)紫外、可視吸光式分析計
試料に光を照射すると、その試料に特有の波長の光が吸収される。この吸収の強さは試料の濃度および試料中の光透過長に比例する。したがって、このときの透過光量と試料濃度の関係から定量分析ができる。分析計としては試料水をそのまま測定する水中の有機性汚濁物質測定器(UV計)、濁りの程度を直接透過光量で求める比濁分析計等がある。また、発色剤を用いて試料水中の特定物質を発色させ、それに光学フィルタを用いて選別した特定波長の光を照射して、その透過量から定性定量分析を行う方法(比色方式)もある。この方式ではボイラ水中のSiO2やリン酸イオンの測定、排水中のクロム、フェノール、残留塩素、リンおよび窒素等の測定ができる。
(b)赤外線式分析計
液体分析計としては水中の微量有機体炭素を燃焼させてCO2ガスとして測定するTOC(全有機炭素)分析計や水中に分散する油分を溶剤で抽出後測定する油分分析計などに利用されている。測定原理等はガス分析計「1.2(2)光式分析計」の項を参照されたい。
(c)光散乱式分析計
試料液中の微小粒子によって散乱した光を測定する濁度計がある。入射光に対する散乱光の取出し角度に種々のものがあり、また透過光を同時に測定し、その比をとることにより色度の影響を除くことも行われている。また試料液に直接光を透過させ、この透過減衰量を測定する濁度計もある。
その他に試料水落下方式や水面の散乱光測定方式等、セル窓のない方法も多用されている。この方法で濁度だけでなくSS(浮遊物質)、MLSS(活性汚泥濃度)、SV(活性汚泥容量)/SVI(汚泥容量指標)等の測定器も作られている。
また、水中の油分を超音波による浮化の前後の濁度で測定するもの、レーザー光を用いて超微粒子による散乱光を測定し、超純水中の超微粒子量を測定するもの等がある。
(d)光度滴定式分析計
滴定の終点を特定波長の光の透過量変化で検出して測定する方法で、プロセスタイトレータとして用いられている。
(e)その他の分析計光式分析計
その他としては、レーザ光を水面に照射し、油膜による反射光量を測定するものや屈折率による干渉縞の測定から濃度を測定する方式等がある。
図1.5.20 油膜検知器
(3)電磁気式分析計
(a)放射線応用式分析計
放射線を応用したプロセス用分析計には石油中のサルファ分析計等がある。サルファ分析計には、硫黄元素特有の蛍光X線を測定する方式のものと、放射線が硫黄元素に吸収される度合を測定する方式とがある。
(4)クロマト装置
試料液を気化してガスクロマトグラフで測定する方法と、液体クロマトグラフで直接測定する方法がある。ガスクロマトグラフの解説についてはガス分析計「1.2(4)」項を参照されたい。液体クロマトグラフは、移動相を液相のままで行うもので、キャリヤ液として水またはアルコール等を用い、液分離管で成分液の分離を行うものである。また、イオンの種類を定性、定量分析するものをイオンクロマトグラフと呼ぶが、その方法から液体クロマトグラフに大別される。
(5)熱式分析計
(a)温度滴定器
温度滴定は化学反応に伴う微少な温度変化を測定して当量点を測定する方式である。電気滴定法や光度滴定法で検出できない化学反応もこの方式で当量できる場合がある。