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- 5-5 その他の環境計測器
5-5 その他の環境計測器
- 1. 大気汚染計測器
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- 3. 騒音・振動計測器
- 4. 自動車排出ガス計測器
- 5. その他の環境計測器
5-5-1 雨水計測器
1. はしがき
酸性雨は大気上空の酸性物質が雨滴に溶解して降ってきて地上で土壌や湖沼水の酸性化、動植物の生態への影響など各種の被害をもたらす。降雨自動測定装置は降雨の性質を測定することによって、大気汚染観測を行う湿性の大気汚染計測器である。測定対象と測定方式を表1に、雨水計測器の構成例を図1 に示す。
図1 において、0.5 ~ 1.0 mm φ以上の雨滴があった場合、感雨器が作動し、まず内部を洗浄水で洗ったのち、水口の上蓋が開く。雨は受水部を通って転倒ますに流れ込み降雨量が0.5 mm(15.7 mL)ごとに区切られてセルに入る。ここで降雨試料のpH、電気伝導率(導電率)、水温が測定される。雨が降っている間は、降雨量0.5 mm ごとにこの測定が繰り返される。雨が降り止むと受水口の上蓋を閉じて再び洗浄水で自動的に洗浄し観測を終る。なお、降雨のないときは、1 日に1 回の周期で電極保護と内部清掃のために内部が自動洗浄される。
5-5-2 酸性雨モニタリング
1. はしがき
酸性雨による環境汚染は、原因物質の発生源から数千キロ離れた地域にも被害を及ぼすことが知られており、地球規模の環境問題として認識されている。
ヨーロッパでは、昭和54 年(1979 年)に「長距離越境大気汚染条約」が締結され対策が進められている。
平成10 年(1998 年)に日本のイニシアチブにより、「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)」が組織され、2 年半の試行稼動後平成13 年(2001 年)1 月から本格稼動をしている。
酸性雨の自動測定装置は、pH、電気伝導率(導電率)の自動測定をするものが多いが、降雨の開始時から雨水を自動採取し、従来のpH、導電率、水温、雨量とともにイオンクロマトグラフ法によって、陰イオンの測定をするものがある。
図2 に自動測定装置の測定フローを示す。
2. 測定方式
2.1 イオンクロマトグラフ法(IC 法)
イオンクロマトグラフ法(IC)は、主に無機イオンを対象とした分離分析法として広く普及している。中でも無機陰イオンの分析においては、従来の分析法がIC に置き換わっている。これは、IC が感度、精度、操作性など多くの面で従来法に優るためである。IC を特長付ける要素としては、通常、低交換容量のイオン交換カラムと電気伝導度検出器(CD)の組み合わせが挙げられるが、逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた逆相イオンペアクロマトグラフィーにより分離する方法や、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で最も汎用される紫外吸光度検出器(UVD)で検出する方法も使用されている。
IC は、水溶液中のCl-、NO3-、SO42- などの無機陰イオンの高感度・一斉分析法として特に優れる他、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンなどの分析にも適しており、雨水、河川水、上水、地下水をはじめとする環境計測に多用されている。
汎用的に用いられているIC は、CD を用いるサプレッサ方式及びノンサプレッサ方式に分けられる。
2.1.1 サプレッサ方式
図3 にサプレッサ方式の構成図を示す。通常陰イオンの測定において、NaCO3/NaHCO3 やNaOH などの希薄な電解質溶離液を用いるが、これ自体の電気伝導度が高いため高感度の測定が困難である。そこで分離カラムを通過後、サプレッサのイオン交換を利用しNa+ をH+ に交換し、溶離液自体を低電気伝導率の溶液(H2CO3、H2Oなど)に変換させる。その結果、バックグランドの電気伝導率は低くなりS/N 比は改善され高感度、高安定の測定が可能である。
2.1.2 ノンサプレッサ方式
図4 にノンサプレッサ方式の構成図を示す。溶離液の工夫により、サプレッサを用いることなく高感度検出を可能としたIC である。ノンサプレッサ方式で高感度を得るためには、バックグラウンド電導度を低く抑えると共にピーク高さができるだけ大きくなるよう溶離液を選定する必要がある。
ノンサプレッサ方式IC で陰イオンを検出する時のピーク高さは、次のように求まる。
移動相中の陽イオン、陰イオンの当量電導度をλ+、λ-とすると、移動相の電導度ΛE は、次式で表される。
ΛE =(λ+ + λ-)CE
CE:移動相のイオン濃度
ここにサンプルイオンが注入されると、その溶出位置での電導度ΛS は、次式で表される。
ΛS =(λ+ + λ-)(CE - CS) + (λ+ + λS)CS
ここでCS は、検出器のセル内のサンプルイオン濃度、λS は、サンプルイオンの当量電導度である。
ピーク高さ(ΔΛ)は、ΛS とΛE の差として表されるので、次式となる。
ΔΛ=ΛS -ΛE =(λS - λ-)CS
これらの式は簡単のため、理想的な条件を仮定しているが、ピーク高さはサンプルイオンと競合イオンの当量電導度の差によることがわかる。また、バックグラウンド電導度は競合イオンの濃度と当量伝電導度によることがわかる。
したがって、ノンサプレッサ方式のIC では、当量電導度が低く、溶出力が強いイオンを溶出として用いることが好ましい。つまり、バックグラウンド電導度には溶出イオンの当量電導度と濃度が大きく影響し、ピーク高さには目的イオンの当量電導度と溶出イオンの当量電導度の差が重要となるのである。芳香族カルボン酸イオンが陰イオン分析における溶出イオンとして多用されているのは、分子量が大きいため当量電導度が低い上、疎水相互作用により固定相に保持され、この結果溶出力が高くなり、上記条件を満たすためである。
また、陽イオンの分析において、溶出イオンとH+ が用いられるのは、H+ が他のイオンに比べ著しく高い当量電導度を示すため、バックグラウンド電導度は高いもののピーク高さが非常に高くなり、感度的に有利なためである。ただし、この場合ピークは電導度の減少方向に出るので、出力の極性を負にする必要がある。
ノンサプレッサ方式の利点として、装置の簡素化、保守の容易さに加え、分析条件の自由度が高くより多くの成分への適用が可能なことが挙げられるが、高感度を得るためには、検出系の高精度な温度制御と低脈流送液が必須である。
2.2 間接吸光検出(IPD)方式
図5 にIPD 方式の構成図を示す。溶出イオンに紫外吸光性イオンを使用し、紫外吸収を持たない目的イオンの溶出に伴う溶出イオンの減少を吸光度の減少として測定することにより、HPLC で汎用されているUVD による検出を可能としたIC である。
図6 にIPD 方式の原理説明図を示す。平衡状態においては、溶出イオンの紫外吸収によりバックグラウンドは高い吸光度レベルで安定している。ここに目的イオン(図ではA-、B-)を含む試料を注入すると、各イオンは溶出イオンとのイオン交換反応を繰り返しながらカラム内を異なる速度で移動する。カラムから目的イオンが溶出するときに、当量の溶出イオンが溶離液から固定相に移動するので、目的イオン溶出位置では溶出イオンの濃度が減少し、これに伴い吸光度も低下する。この吸光度変化をUVD の出力の極性を負にして測定することにより、目的イオンの濃度に応じた大きさのピークが検出される。
IPD 方式の利点として、市販のHPLC がそのまま使用できること挙げられるが、溶離液条件はかなり制限される。また、一般にCD を用いた方式に比べ感度がやや劣る。
5-5-3 ゴルフ場使用農薬モニタリングシステム
平成13 年(2001 年)12 月28 日環境省指針値「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」の改定によりゴルフ場で使用される規制物質が10 項目追加され45 項目になった(環水土234、平成13 年(2001 年)12 月28 日)。この検査に用いるシステムは、表2 で示した通りである。この検査方法は、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)が中心となっている。