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1-7-1 コンピュータバリデーション
1.1 コンピュータバリデーションの目的
医薬品産業におけるコンピュータ利用は研究開発矢製造部門では欠かすことができない重要な要素となっている。コンピュータバリデーションは医薬品産業におけるコンピュータシステムの開発から廃棄にいたるライフサイクルの全てにわたって、正常に動作することを証明することである。
コンピュータバリデーションは、医薬品開発・製造におけるコンピュータシステムの故障によって生じる国民の健康や生命への影響をあらかじめ排除するために行われる活動と言うことができる。図7.1にコンピュータバリデーションの概念を示す。
図7.1 コンピュータバリデーションの概念
1.2 日本におけるコンピュータバリデーション
日本国内におけるコンピュータバリデーションは厚生省(厚生労働省)が1992年に発行した「コンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドライン」で実用化が進められてきた。平成17年4月に改正薬事法が施行され、日本の製薬企業における医薬品製造の全面委受託が可能となるに伴い、この「コンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドライン」が廃止となり、新しいコンピュータバリデーションが規制されようとしている。
日本でも国際製薬技術協会の活動が重要な意味を持つよいうになるものと思える。
<コンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドライン>
コンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドラインは目的、適用の範囲、開発業務、運用管理業務、文書及び記録の保存管理、及び適用の時期から構成されている。
また、コンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドラインの適用範囲の中では対象となるシステムは以下の4つのケースとしている。
- 医薬品の製造工程を制御または管理するためのシステムおよびその製造データを保管するためのシステム
- 原料および製品(中間製品)の保管、出納等の生産管理を行うためのシステム
- 製造指図書や試験検査実施計画書および記録書類を作成するためのシステム
- 品質管理のためのシステムおよびその管理データを保管するためのシステム
(注)
コンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドラインは、日米欧におけるコンピュータバリデーションがいずれもコンピュータシステムの開発から廃棄にいたるライフサイクルの全てにわたって正常に動作することを保証することが求められている点においては大きな違いはないが、細部で異なる部分がある。
例えば、日本のコンピュータ使用医薬品等製造所適性管理ガイドラインでは使用目的が限定されそのプログラムがハードウエアの提供業者によって汎用機能として固定され、パラメータを設定することによって機能が実現するシステムは適用範囲外としている。一方、欧米ではコンピュータバリデーションの適用されないシステムはない。わかりやすい例では機器に組み込まれているPLC(言語;ラダー)が該当する。
<コンピュータバリデーションの国際ガイド>
平成17年4月に改正薬事法が施行され、日本の製薬企業における医薬品製造の全面委受託が可能となり、製造モデルの多様化、製造コストの低減など広範囲に影響が及ぶものと思われる。日本の医薬品製造におけるコンピュータバリデーションも国際協調がとれた規制が行われるようになり、国際製薬技術協会の活動が重要な意味を持つよいうになるものと思える。
国際製薬技術協会/日本本部の詳細はWebページ「http://www.ispe.gr.jp/」を参照のこと。
(注)
国際製薬技術協会(ISPE; International Society of Pharmaceutical Engineering)は1980年米国で誕生し、現在世界80カ国、23,000人を有する世界最大の非営利の教育啓蒙ボランティア団体で、会員は世界中の医薬品・メディカルデバイスなどヘルスケア製品の製造に関する専門技術者、規制当局、大学研究機関学生等の広範囲なメンバーで構成され科学に基づくプラクティカルな国内外の技術および人脈の交流を積極的に行っている。
最近、ISPEは"Engineers Pharmaceutical Innovation"をスローガンに製薬産業の触媒として新技術応用への挑戦と普及のために努力している。 ISPEはFDAや他の世界の規制当局と共同PJを数多く展開している。例えば、SUPACではISPEとFDAと共同でゴア副大統領からHammer賞を授与された。その他にもISPEのBaseline GuideシリーズはFDAのレビューを受けて発刊されているし、これらは厚生労働省はじめ世界の規制当局も保持し行政にも参考にしている。また、FDAによる製薬産業のパラダイムシフトの口火を切ったProcess Analytical Technology(PAT)の普及には、世界中の主要のISPE支部がFDAの依頼を受けて普及セミナーを共催している。