5-2-11 その他の水質汚濁用関連機器

2.11.1 排水用流量計

1. はしがき

 排水流量の測定は、各事業場が排水処理施設の維持管理等を目的として自主的に行なう場合のほか、自治体との間で個別に締結した公害防止協定にもとづいて行なう場合や、東京都、茨城県、愛知県、三重県のように公害防止地方条例によって義務付けが行なわれる場合がある。また東京湾、伊勢湾、瀬戸内海沿岸地域では、昭和56年(1981年)7 月より全面的に水質総量規制が実施され、これらの規制対象事業場では、排出する汚濁負荷量を算出するために、排水流量の測定が不可欠の要素になっている。
 排水用流量計は、さまざまなものが実用化されているが、その使用条件は、測定範囲、適用水路の形状、水路勾配又は流体圧力、許容水頭損失、SS 分や腐食性の有無等多種多様であり、保守に要する費用や時間を最小限におさえつつ、所定の性能を維持するためには、使用条件に最も適合した原理、構造のものを選定することが重要である。

2. 排水用流量計の種類と測定方式

 排水用流量計の種類は、自然流下によって自由水面を持った流れを測定する開水路用と、管路内を充満して流れる満水管の測定を目的としたものに大別できる。
 開水路流量計の代表的なものとしては、せき式流量計、フリューム式流量計、流速水位演算式流量計等がよく知られている。また、満水管路用流量計として、電磁式流量計が使用されているほか、差圧式流量計、超音波式流量計、羽根車式流量計、渦式流量計、容積式流量計、面積式流量計等も使用される。
 これら各流量計の水路条件に対する選択基準を表1 に示す。
 以下、主要な排水用流量計の測定方式と特徴を述べる。

各流量計の水路条件に対する選択基準の表

2.1 せき式流量計

 水路の途中又は末端に仕切板(これをせき板という)を設け、流れがこのせき板を乗越えて自由落下する状態の場合、せき板の上流側水位は流量と一定の関係を持つので、この水位を検出して流量を測定する。
 せき板の形状には、全幅せき、四角せき、三角せきがあり、流量の多少に応じて使い分けられている。水位の検出には、フロート式、ディスプレースメント式、超音波式、静電容量式、触針式、測圧式、パージ式等が使用される。
 せき式流量計は、構造が簡単であるが開水路流量計としては、比較的測定精度が高く、設置費用も他の方式に比較して割安である。ただし、せき板の上流側に沈殿物の堆積を生じ易いこと、及び水頭損失が数100 mm 程度とやや大きいのが難点である。図1 にせき式流量計の測定原理を示す。なお、せき式流量計に関して、JIS B 8302「ポンプ吐出し量測定方法」及びJIS K 0094「工業用水・工場排水の試料採取方法」に規定がある。

せき式流量計の測定原理

せき式流量計での流量の算出は、次による。

算出式(席の形状による流量の求め方)

ここに、

算出式上の定義

2.2 フリューム式流量計

 水路の一部を絞り、幅の狭い部分を作ると、その部分で流れが常流から射流に遷移し限界流を生じる。限界流部分を通過する流量は、その水位によって一義的に定まるので、限界流の直前部分の水位を測定して流量を算出する方式である。水位の検出は、せき式流量計と同じようなレベル計が使用される。
 フリューム式流量計は、水頭損失がせき式流量計の1/4 程度と小さく、沈殿物の堆積も生じにくい。ただし、設置工事に関する制約がいろいろあり、設置工事費はやや割高となる場合が多い。
 フリューム式流量計の代表的なものとして、矩形水路用パーシャルフリュームが、また円形水路用パーマボーラスフリュームがよく知られている。図2 にフリューム式流量計の測定原理を示す。なお、パーシャルフリューム式流量計に関して、JIS B 7553「パーシャルフリューム式流量計」に規定がある。
 フリューム式流量計で測定した水位から流量を演算する算式は、次式による。  

関係式(フリューム式流量計で測定した水位から流量を演算)

ここに、

フリューム式流量計の測定原理

2.3 流速水位演算式流量計

 流水断面内の特定の点流速(又は線流速)と、流水断面内の全平均流速との関係が水位の関数として定まるとの前提のもとに、特定点の流速と水位を同時に検出し、両者を演算して流量を測定する方式である。
 流速計としては、渦式流速計、超音波式流速計、電磁式流速計等が使用され、レベル検出には超音波式レベル計、静電容量式レベル計等が使用される。
 大流量の測定を経済的に実現することが可能であり、設置も容易である。ただし、逆流を生じる水路や、充分な直線部の不足している水路では、流速分布の変動が予想され、原理的に測定が難しい場合もある。図3 に流速水位演算式流量計の測定原理を示す。なお、流速水位演算式流量計に関して、JIS K 0094「工業用水・工場排水の試料採取方法」に規定がある。

流速水位演算式流量計の測定原理

流速水位演算式流量計での流量の算出は、次式による。

関係式(流速水位演算式流量計での流量の算出)

ここに、

算出式上の定義

2.4 電磁式流量計

 測定流体の流れの方向と直角な向きに磁界を加えると、流れの向きと磁界の向きの両者に対して直角の方向に起電力を生じる。この起電力は、流量に比例するので、この起電力を検出して流量を測定する。
 電磁式流量計は、パイプ内壁がテフロン、ゴム等の絶縁物でライニングされており、接液するのは一対の電極のみである。したがって、圧力損失が無く、腐食性のある液体やSS 分を含む液体にも適用可能であり、満水管用の排水流量計として多用されている。また、電磁式流量計をゲートに取付けて開水路をせき止め、水没させた状態で、開渠の流量を測定する方式も実用化されている。図4に、電磁式流量計の測定原理を示す。なお、電磁式流量計に関して、JIS B 7554「電磁流量計」に規定がある。

電磁式流量計の測定原理

電磁式流量計での流量の算出は、次式による。

関係式(電磁式流量計での流量の算出)

ここに、

算出式上の定義

2.5 差圧式流量計

 配管中に孔のあいた板(オリフィス)又は途中を細く絞った短管(ベンチュリ管)を挿入すると、その前後に圧力差を生ずる。この差圧は、流速の二乗に比例するのでこの差圧を測定して流量を知る。
 プロセス工業用として最もポピュラな流量計であるが、排水用として使用する場合には、固形物の詰りや圧力損失に留意を必要とすることがある。図5 に、差圧式流量計の測定原理を示す。なお、差圧流量計に関して、JIS Z8762「絞り機構による流量測定方式」に規定がある。

差圧式流量計の測定原理(オリフィス、ベンチュリ)

差圧式流量計での流量の算出は、次式による。

関係式(差圧式流量計での流量の算出)

ここに、

算出式上の定義

2.6 超音波式流量計

 流体中を伝播する超音波の速度又は周波数が、流体の流速によって変化することを利用した流量計で、時間差法とドップラー法とがある。
 時間差法は、管路の上流と下流に送受信器を取り付け、交互に超音波を発射して、それぞれの伝播時間の差から流速を求める方法である。図6 に、時間差法超音波式流量計の測定原理を示す。

時間差法超音波式流量計の測定原理

時間差法超音波式流量計での流量の算出は、次式による。

関係式(時間差法超音波式流量計での流量の算出)

ここに、

算出式上の定義

ドップラー法は、流体中に発射した超音波の周波数と浮遊物により反射した周波数との間にドップラー効果による偏位が生じるので、この周波数差を検出して流速を求める方法である。
 既設の管にも比較的容易に設置でき、圧力損失がない。ただし、直管長が不足している場合や多量の泡・固形物が混入する場合には測定不能や精度よい測定ができなくなることがある。図7 に、ドップラー法超音波式流量計の測定原理を示す。

ドップラー法超音波式流量計の測定原理

ドップラー法超音波式流量計での流量の算出は、次式による。

関係式(ドップラー法超音波式流量計での流量の算出)

ここに、

算出式上の定義

2.7 その他

 その他、排水用に使用される流量計としては、面積式、羽根車式、渦式などがある。
 面積式流量計は、JIS B 7551「フロート形面積流量計」に規定があり、鉛直なテーパ管内に自由に上下するフロートを設け、下方から上方へ流体を導き入れると、フロートの位置が流量と一定の関係にあることを利用して流量を求める。
 羽根車式流量計は、流れの中に置かれた羽根車の回転数が、流速に比例することを利用したもので、羽根車の形により、プロペラ型、ウォルトマン型、タービン型などがある。また、全流検出形、挿入形などがある。
 渦式流量計は、JIS Z 8766「渦流量計-流量測定方法」に規定があり、流れの中に柱状物体を置くと、その後方に2 列の非対称の渦列が発生し、この渦の発生周波数が、流量に比例することを利用したもので、渦の検出には、サーミスタ、ストレーンゲージなどが使用されている。

3. 排水用流量計と法規制

3.1 水質汚濁防止法

 汚濁負荷量の算出に使用すべき排水用流量計について、昭和54 年(1979 年)環境庁(現環境省)告示第20 号は次の如く定めている。
 1)流量計又は流速計であって、自動的に水量を積算して計測結果を記録することができる機能を有するもの、又はその機能を有する機器と接続されているものにより水量を計測する方法。
 2)積算体積計であって、自動的に計測結果を記録することができる機能を有するもの、又はその機能を有する機器と接続されているものにより水量を計測する方法。また、法令では流量計、流速計、体積積算計の具体的な測定方式については規定していないが、一般的には以下のものが上げられる。
 a)排水流量計
 せき式、フリューム式、流速水位式、面積式、差圧式、傾斜板式、羽根車式、回転球式、渦式、超音波式、電磁式
 b)排水流速計
 羽根式、渦式、超音波式、電磁式
 c)排水積算体積計
 せき式、フリューム式、流速水位式、面積式、分割実測式、差圧式、傾斜板式、羽根車式、回転球式、渦式、超音波式、電磁式

3.2 計量法

 排水積算体積計、排水流速計、排水流量計は平成5 年(1993 年)通商産業省(現経済産業省)政令第329 号により特定計量器に指定され、計量法の規制を受けている。これらの計量器の製造を行なう場合には、経済産業大臣の事業登録が必要であり、より信頼性の高い製品が使用者に提供されるよう配慮されている。

2.11.2 その他

1. はしがき

 この項では、その他水質汚濁計測関連機器として負荷量演算器及び関連機器、砂ろ過装置、洗浄器について述べる。

2. 負荷量演算器及び関連機器

 システム製品及び負荷量演算器は、平成13 年(2001 年)11 月の水質汚濁防止法施行令の改正に伴う水質総量規制にもとづく汚濁負荷量の測定のための機器に関するものが主となる。
 総量規制では、1 日当りの排水量が50m3 以上の各事業場では、COD、全りん、全窒素濃度と排水量を測定し1日負荷量として記録報告することを義務づけられている。
 水質総量規制負荷量演算システムのセレクトガイドを、図8に示す。COD 換算の汚濁負荷量は発生源の状態によって、TOC(全有機炭素量)又はTOD(全酸素要求量)又はUV(紫外吸光度法)等の汚濁計測器と流量計及び演算器を用いる連続測定法、COD 計測器と流量計及び演算器を用いる間欠測定法、コンポジットサンプラとCOD計測器と流量計及び演算器を組合せる方法があるが、これらの測定法の選択は環境庁(現環境省)指導では、COD 手分析値と最も相関の高い方法を事前調査し、決定することが望ましいとしている。

水質総量規制負荷量演算システムのセレクトガイド例

 連続測定法は、汚濁濃度計と流量計からの連続信号を負荷量演算器で演算し、瞬時汚濁負荷量を求める。次に瞬時負荷量を積算して、1 時間又は1 日汚濁負荷量を算出する。汚濁濃度及び流量計からの信号は、それぞれの計測器に付帯する記録計に指示記録されるか、伝送信号としてテレメータ等に入力される。1 時間負荷量及び1 日負荷量は、演算器によって記録され、1 日負荷量は定められた時間に伝送処理される。ただし、全窒素・全りん計測器は、間欠測定のため流量計からの瞬時流量を演算処理し時間負荷量、日負荷量を算出する。
 COD 計測器による間欠測定システムとしては、COD濃度変化が比較的少ない場合は、サンプルを直接1 時間に1 回採取し間欠測定を行い、瞬時流量信号の1 時間積算値から1 時間負荷量を、また1 時間負荷量から1 日負荷量を演算する。
 COD 濃度/ 流量変化がはげしい場合は、濃度/ 流量変化を平均化するためにコンポジットサンプラで1 時間流量比例採水し、この試料水をCOD 計測器で測定することによって1 時間平均水質を求める。
 水質汚濁負荷量演算器による演算処理例を、図9に示す。流量計及び濃度計の信号をデータセレクトによって、それぞれ演算器内に送り込み、A/D コンバータによってディジタル値に変換しマイクロコンピュータに伝送し各種の演算を行う。

水質汚濁負荷量演算気による演算処理例

 演算内容は、瞬時負荷量、時間積算流量、時間負荷量、時間平均水質、日積算流量、日負荷量、日平均水質などを算出する。さらに各計測器からの測定値異常信号、電源断信号、その他の機器異常信号を受け、データ欠測処理等を行うとともにテレメータ等への伝送を行う機能もある。
 また、流量計、液面計等からの信号を直接受け積算し印字する専用機能のものもある。

3. 砂ろ過装置

 水質分析計へ導入される試料水には、浮遊物質や懸濁物質が含まれていることが多く、フィルタ等による前処理なしでは配管の詰まり、機器の故障等のトラブルのもとになることがある。
 このようなトラブルを防止する目的で、前処理装置として、砂ろ過装置等が使用されることがある。例としての砂ろ過装置は、試料水中の懸濁物質を砂でろ過することを目的としており、系統図を図10に示す。砂は2本のフィルタ槽に入っており、一定期間で交互に自動逆洗浄を行い、目つまりを防止している。

ろ過系統図

4. 洗浄器

 超音波を水中で発生させることによって起るキャビテーション現象(空洞現象)が、物の表面についた汚れおとしに効果のあることを利用して、pH 測定における電極部の洗浄にも利用されるようになっている。
 pH 計に用いられる超音波振動素子は、磁歪素子又は電歪素子が多く、発振用周波数は、10 kHz から200 kHzぐらいが使われている。超音波洗浄器の発振出力は、連続照射の場合には10 W 程度で比較的小さいものが、また間欠照射の場合には数10 W 程度のやや大きいものが使われており、メンテナンス周期の改善に役立っている。
 pH 計の電極洗浄には、洗浄器として表2に示す超音波洗浄のほかにブラシで機械的にと汚れをこすりおとすブラシ洗浄方式、水のジェット噴射の圧力で汚れをおとす水ジェット方式、塩酸等の化学薬品で汚れを洗浄する薬液洗浄方式、それらの方式を組合せた種々の方式が開発されている。
 超音波洗浄以外の洗浄方式の場合には、間欠洗浄方式としたものが一般的であり、洗浄間隔及び洗浄時間は、汚れの状態に合せて適切な選択ができるようになっている。

各種洗浄方式例

目次へ
ページトップへ